2026/05/25

愛知芸術文化センター&アートのお仕事【特別編】舞台芸術お仕事ガイダンス こんな職業あったんだ!?

世の中にはたくさんの職業があり、舞台芸術の世界でも、表舞台に立つアーティストから裏方で支えるスタッフまで、実にさまざまな人たちが関わっています。「舞台をつくるって、どういうこと?」「どんな人が関わっているの?」という疑問に答える機会として、愛知芸術文化センターでは、2026年3月14日(土)に舞台芸術お仕事ガイダンスを開催しました。本連載では通常、一人の働く人を深掘りインタビューしていますが、今回は少し視点を広げて、舞台芸術を支える多様なお仕事と、そのリアルな声に触れるイベントをレポートします。

「好きなことを仕事にしたいけど、どうしたらいいかわからない」「芸術や文化に興味はあるけど、どんな関わり方があるのだろう?」そんな思いを抱く人にとって、舞台芸術の裏側をぐっと身近に感じられる企画です。未来の選択肢が広がる、そのきっかけを探してみませんか?

 

 

歌手やダンサー、俳優など、アーティストのパフォーマンスが観客に届くまでには、実にさまざまなお仕事があります。アーティストとともに舞台をつくり上げる人たちの存在は、欠かすことができません。今回は「舞台を支える人」が登壇し、普段はなかなか聞くことのできない現場のリアルについてお話しいただきました。

 

 

登壇者がスライドを使って、自身の会社やお仕事内容を15分ずつ発表。その後は、全員共通で、気になる質問「1週間のタイムスケジュールを教えてください」や学生時代に力をいれておくこと、給与等に答えるコーナーも設けられました。

 

今まさに現場の最前線で活躍している先輩から、直接お話を聞ける貴重なチャンス!

※登壇順

 

マネージャーのお仕事|株式会社テンポプリモ

 

最初に登壇したのは、クラシック音楽事務所「テンポプリモ」。現在は、海外オーケストラの招聘(しょうへい)事業を中心とした、アーティストマネジメントのお仕事に携わっています。音楽事務所の業務は「企画・営業・制作」の3つに分かれ、公演のアイデアを考えるところから、出演交渉、主催者への提案、チケット販売や広報、当日の運営まで幅広く関わります。従業員数10名ほどの少数精鋭の会社で、全員が一から十まですべてのお仕事を担当。特に海外アーティストの場合は、渡航や宿泊、ビザの手配なども重要な役割です。また、来日中はマネージャーとして常に同行し、アーティストを支えることも大切なお仕事のひとつ。「地道な業務の積み重ねのなかで、演奏会が成功し、『日本に呼んでくれてありがとう』と言葉をもらえた瞬間に、大きなやりがいを感じます。昨年には、長年の夢だったフランス人ピアニストの来日公演を14年ぶりに実現し、日本のみなさんにアーティストを知ってもらえたことがすごく嬉しかったです」と語っていただきました。

 

イベンターのお仕事|株式会社サンデーフォークプロモーション

 

東海地区で年間約1700本以上の公演を運営する「サンデーフォークプロモーション」。コンサートやイベントの企画・運営を担う「イベンター」として、アーティストと観客の架け橋となって、公演の成功を影で支えるお仕事についてお話しいただきました。主に現場で運営を行う「外勤」として、公演1か月ほど前から準備に入り、アルバイトスタッフの手配や会場との打ち合わせ、必要備品の準備などを進めていきます。公演直前には消防への申請や運営マニュアルの作成なども行い、当日は多くのスタッフをまとめながら現場を動かします。コンサートのほか、舞台や演劇公演も含め、1か月に約15本の公演を同時に進行することも。「人を楽しませるお仕事をしたいという思いが志望動機でした。体力的な大変さもありますが、現場では、女性のスタッフも活躍しています。お客さまの楽しそうな様子を間近で感じられることや、公演成功の一端を担える点、いろいろなアーティストの公演が見ることができる点が3つの大きな魅力です」と言います。現場ならではのやりがいや責任の大きさが伝わってきました。

 

ダンスの制作・広報のお仕事|Dance Base Yokohama 

 

プロフェッショナルなダンス環境の整備とクリエイター支援を目的に事業を企画・運営するダンスハウス「Dance Base Yokohama (DaBY)」。スタジオの運営をはじめ、アーティストの創作支援やワークショップ、トークイベントの企画、国内外への発信など、ダンスを社会にひらく取り組みについてお話しいただきました。施設は「劇場の一歩手前の場所」として、作品を生み出すだけでなく、観客やクリエイターが出会い、つながる場として機能しています。制作・広報として、公演の企画運営や集客、海外への発信・ネットワーキングなど幅広い業務を担当されることが多いようです。「Dance Base Yokohama」は愛知県芸術劇場の唐津絵理芸術監督がアーティスティックディレクターを兼任し、愛知県芸術劇場と連携して創作した演目を、愛知県芸術劇場の「パフォーミングアーツ・セレクション」で上演するときにも、スタッフとして関わっています。「海外ツアーのコーディネートを行うこともあり、作品を世界へ届ける役割も担っています。多様な人と出会いながら、ダンスの魅力を広げていくことに日々やりがいを感じています」と笑顔で答える一面も。一方で、少人数で運営するからこその忙しさとその分のやりがいを語ってくださいました。

 

施設事務職員のお仕事|公益財団法人名古屋市文化振興事業団 

 

「くらしに文化と感動を!」がスローガンの「名古屋市文化振興事業団」。市内の文化施設を運営しながら、公演やイベントの企画・実施を行う公共劇場のお仕事についてお話しいただきました。天白文化小劇場に勤務し、施設の貸し出し対応やチケット販売などの窓口業務に加え、自主事業公演の企画・運営も担当するなど、多岐にわたる業務に取り組まれています。地域に根ざした劇場として、落語会や劇団天白月夜による演劇講座、若手演奏家の支援事業、さらには子ども食堂や介護施設へのアウトリーチなど、多様な取り組みを展開。音楽・演劇・落語といった幅広いジャンルを通して、文化芸術を身近に届けています。「約1年かけて準備した公演のあとに、来場者や出演者から直接喜びの声を受け取れることが大きなやりがいです」など、仕事に対する思いも語ってくださいました。地域に寄り添いながら文化を支えるお仕事の魅力が感じられました。

 

歌舞伎・演劇製作のお仕事|松竹株式会社 

 

松竹」の歌舞伎のプロデューサーさんからは、公演の企画立ち上げから上演までを担うお仕事について紹介いただきました。歌舞伎公演は、数年前から演目や出演者を検討し、配役の決定やスケジュール調整、稽古の進行など、多くの工程を経て形づくられていきます。なかでも重要なのが予算管理で、公演の規模や内容に応じて収支のバランスを見極める判断が求められます。「大きな額の予算を管理し、数百人規模の関係者と連携しながら進めるため、調整の難しさや責任の大きさを感じる場面も多い一方で、自らの決断が舞台として立ち上がり、初日や千秋楽のたびに感動しています」と語っていただき、華やかな舞台を“つくる側”としての醍醐味が伝わってきました。

 

舞台芸術業界を知り尽くす、管理職にもご登壇いただきました。

舞台・テレビ・イベントの大道具製作のお仕事|金井大道具株式会社 

 

創業1886年、舞台装置やテレビセットの製作を手がける「金井大道具」。舞台や映像の“かたち”を実際に作り上げるお仕事について紹介いただきました。お仕事の魅力は「自分の仕事がテレビや舞台に登場すること」「チームでひとつの作品を完成させること」。テレビ番組やファッションショー、歌舞伎やミュージカルなど、幅広い現場で舞台美術を担い、デザインから製作、美術、設営、本番まで一貫して関わることも多いのが特徴です。案件によっては海外で製作された装置を再現・調整するなど、柔軟な対応も求められます。今回は、2026年度に「金井大道具」が採用募集する6つのコース「製作」「美術」「施工管理」「デザイン」「管理本部」「プロジェクト」や、社内でのキャリアステップ、求める人材についても説明していただきました。「感動をつくる仕事に挑戦しませんか?」という締めくくりの言葉が心に響きました。

 

イベントプロデューサーのお仕事|東海テレビ放送株式会社 

 

東海テレビ放送」事業局事業部の発表テーマは、「新卒から定年まで37年間を振り返って思うこと」。テレビ局が手がけるイベント事業について、これまでのキャリアとともに紹介いただきました。アナウンサーとして入社後、出産・育休を機に技術局放送運行部、広報宣伝部、再び放送運行部を経て事業部へ異動し、現在はクラシックコンサートや落語公演の企画・運営を担当。事業部のスタッフは、オクトーバーフェストやクリスマスマーケット、科学館や美術館の展示など、多岐にわたる業務を担います。一方で、放送局の社員として部署異動(報道・スポーツ・制作・編成・営業など)があるため、必ずしも同じ分野に関わり続けられるとは限りません。「さまざまな経験を重ねながら、自分に合った仕事を見つけていくことの大切さ」が語られました。そして、「多くの人との出会いや経験が次の仕事につながる」という、学生さんたちにとっても、キャリアの広がりと可能性を感じさせる内容でした。

 

ガイダンスの最後は、交流タイム! 

先輩たちに直接質問したり、今考えていることを話したり…。さまざまな先輩に積極的に声をかける、熱心な場面が見られました。

 

\ご参加者さまからのご感想/

  • 普段見ているテレビの裏側や、舞台が出来上がるまでの過程を詳しく知ることができ、これから見る視点が変わりそうだと感じました。「サンデーフォークプロモーション」さんが最近力を入れている演劇のなかに、自分の知っているミュージカルがあったことにも驚きました。(大学3年生)
  • 大学では音響を学び、コンサートの企画にも取り組んでいます。昨年の夏には、愛知県芸術劇場の「インターンシッププログラム 2025」にも参加しました。今回はお仕事について具体的なお話を聞くことができ、想像していた以上に大変な面があることや、面白そうだと感じるお仕事を知ることができました。なかでも「学生時代にやっておくと良いこと」として、やるべき仕事ではなく、「公演にたくさん足を運んだ方が良い」と言われたことが印象に残っています。(大学2年生)
  • 転職を考えているなかで参加し、その第一歩としてとてもわかりやすい内容でした。「東海テレビ放送」さんがお話しされていた「すべてがつながっている」という言葉が印象に残っています。私も今すぐ転職するか、このまま続けるかはまだ決めきれていませんが、いま取り組んでいることも将来に活かせれたらいいなとすごく思いました。(社会人)
  • 照明や音響のお仕事に興味があり、なかでも大本命だったのが「金井大道具」さんでした。とても規模の大きなお仕事を多く手がけていることを知り、実際にお話を聞けて良かったです。将来の選択肢として舞台関係のお仕事も考えているので、大学選びの参考にもなりました。働かれている方の考え方や経験に基づく言葉をたくさん聞くことができて、これからの人生に関わる大切なことを教えていただいたように感じています。これまでは大学選びがすべてだと思っていましたが、「アルバイトから関わる」という選択肢もあると知り、新しい視点が広がりました。今日参加して良かったです。(高校2年生)

 

メッセージ——先輩から、学生さんや舞台芸術業界を目指すみなさまへ

 

株式会社テンポプリモ 鈴木杏奈さん
働き始めて数年の私にとって、今回のガイダンスは学生さん向けに話をする初めての機会で、せっかくこの業界に興味を持ってくださったみなさまにどんな話をすると良いのだろう…と非常に考えました。ですが、みなさんの真剣な眼差しと質問の観点に私自身も大きな刺激を受けました。これからも幅広く興味を持って進んでいってください!


株式会社サンデーフォークプロモーション 青島葵さん
この仕事は他の業種に比べたら、拘束時間が長かったり、休日が土日ではないため、私生活を重視したいという方にとっては、難しい仕事になりますが、その分やりがいは他では味わえないほどあります。仕事を選ぶうえで重視している点は違うと思いますが、この業界に少しでも興味を持っているのであれば、一緒に舞台をつくる仕事仲間として働けると嬉しいです!

 

 

公益財団法人名古屋市文化振興事業団 稲葉也実さん
私自身、仕事選びに悩んだ経験があり、今回は文化芸術を支える仕事について少しでも知っていただきたいという思いでお話させていただきました。これからも、いま取り組まれていることや好きなこと、興味のあることを大切にしながら、自分らしい道を見つけていってください!みなさまの今後のご活躍を心より願っています。

 

Dance Base Yokohama 田中希さん
幼い頃からのダンス経験や鑑賞体験があり、大学を卒業してから転職を経て、ようやく今の仕事に出会いました。やる気があれば、キャリアは実践の中でついてきます。これから選択肢の広がるみなさまには、まずは興味のあることに飛び込んで、自分の好き、やってみたいという気持ちを見つけてください。

 

 

 

愛知県芸術劇場では、年間を通じた「舞台芸術人材養成ラボ」の取り組みとして、劇場の仕事、舞台芸術に関わる様々な仕事に興味のある方のためのプログラムを用意しています。インターンシップをはじめ、目的・目標に合わせてお選びいただけます。

2026年度も開催予定です。

愛知県芸術劇場の公式サイトやSNS、チラシでご案内しますので、ぜひフォローしてご参加ください!

愛知県芸術劇場 公式サイト

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撮影・編集/村瀬実希(MAISONETTE Inc.)

※ 掲載内容は2026年5月25日(月)現在のものです。

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