
2025/02/10
世界各地で反響を呼んだAR(拡張現実)の短編ダンス作品が日本初上陸!新感覚のアート体験
久屋の街をぶらりと歩きながら芸術が楽しめる、秋の恒例イベント「久屋ぐるっとアート」が2024年11月1日(金)〜4日(月・祝)に開催されました。各所でさまざまな企画が行われ、その中でも注目プログラムの一つが愛知芸術文化センター2階のパブリックスペース「フォーラムⅡ」にて11月2日(土)からの3日間行われた「0AR(ゼロ・エーアール)」です。
前衛的かつ実験的な表現と作品構成が、欧米を中心に高い評価を得ている作品の日本初お披露目!
ということで会期中に、名古屋にお住まいのふかおさんファミリーがモニターとして来てくれました。
\みんなで、3Dの世界へGO!/
パパ、ママ、娘さん(3歳)の3人が体験した様子をレポートします! 皆さまもぜひ、本記事を通して疑似体験をお楽しみください。
パブリックスペース「フォーラムⅡ」では、唐津絵理 愛知県芸術劇場芸術監督(アーティスティックディレクター)が笑顔でお出迎え。
「0AR(ゼロ・エーアール)」について簡単に紹介してもらいました。
「0AR(ゼロ・エーアール)」とは
中村葵とエステバン・ルコックによって設立されたイギリスのダンスカンパニー、AΦE(エーイー)のダンス作品です。2018年に世界初演を迎え、これまでにサドラーズ・ウェルズ劇場(イギリス)、パリ国立シャイヨー劇場(フランス)、シドニー・フェスティバル(オーストラリア)などヨーロッパでは5カ国以上の12都市、15会場で26公演を巡回し、4,000人以上の観客を動員しました。
iPadとAR(拡張現実)のデジタル技術を使用して、現実世界に重ね合わせたダンス・アニメーション(CG)を鑑賞できます。言葉を超えたパフォーマンスが繰り広げられる視聴者参加型&新感覚のアート体験を、小さなお子さまから大人までお楽しみいただける作品です。
世界各地で観客を魅了したダンス作品「0AR(ゼロ・エーアール)」の体験時間は約10分。どんな体験が待っているのでしょうか...!? 早速やっていきましょう。
- 目次 -
小さなお子さまから大人まで、どなたでも気軽に参加OK
会場に用意されたiPadを首から下げ、ヘッドホンを耳にあてたら準備完了。有線イヤホンもあるので、1台につき2名まで一緒に楽しめます。
2Dから3Dの世界へ! 飛び出すダンサーと一緒に遊ぼう
準備ができた人から、床に横たわるダンサーの絵を囲うようにして集合します。iPadの画面内にダンサーが収まるような距離のところでスタート。
現実世界の目に映るダンサーの身体は2Dですが、画面上では開始早々に3Dになって飛び出します。その瞬間「うわー!」と驚くママさん。
画面を指でなぞって参加できる、エンターテインメント性のある仕掛けにもワクワク。
CG のダンス・アニメーションや3Dの要素を取り入れた映像が次々と現れ、ヘッドフォンから流れる音楽と合わせてデジタルアートパフォーマンスに惹き込まれます。
天井から降ってくるボックスを落としたり、立体形状のパズルを揃えたり。ゲーム感覚で遊びながらダンスに親しめるので、アート初心者にもぴったりです。
観客すべてのiPadがつながっていて、全員で同じアニメーションを鑑賞し合える相互交流もお楽しみに。見る方向(角度)を自由に360度変えることが可能で、iPadを持ち歩いて動き回ると、向こう側にいる人が画面に現れるのも面白いところです。約10分間の体験のうち、後半につれて会場内を大きく移動しながらのびのびと満喫しました。
最初はパパのサポートのもと体験した娘さんでしたが、2回目は一人でチャレンジ!
終始、無我夢中! 日頃からタブレットでYouTubeを見たりゲームをしたりするそうで、はじめての経験でも難なくこなして、終わった後には「おもしろかった!」の感想をいただきました。
「0AR(ゼロ・エーアール)」をやってみた感想は?
ママ ARゴーグルは体験したことがあったけど、iPadははじめて!ヘッドホンをしているおかげか、周りのことが気にならなくて結構没入できましたよ。ダンス作品に自分も参加したかのような、不思議な気持ちになりました。他の人が体験しているところを見るのもシュールで面白いですね。
パパ iPadを持って鑑賞するだけじゃなくて、画面を操作することができたから、娘も楽しめたんじゃないかな。全体的にぬめっとした動きで、ヨーロッパらしいと思いました。日本じゃあまり見ない表現ですよね。
\ほかの参加者にもインタビュー!/
- 目には見える。間違いなくそこにあるのに、近づいても触れることができなくて、なんだか未来的!(10代男性2人)
- たまたま通りがかって、参加しました。後半になればなるほど、どんどん人が出てきて不気味でした。画面を見ているだけですが、作品の世界観に入り込めたように思います。(20代男女)
帰り際に「久屋ぐるっとアート」の風船をもらった娘さんはうれしそう。
当劇場が主催する親子で参加できるプログラムにご参加いただいたこともある、ふかおさんファミリー。お休みの日にありがとうございました。ぜひまた遊びに来てくださいね。
イギリス在住のクリエイターにインタビュー
最後に、この作品を創ったイギリスのフィジカルシアターカンパニー、AΦE(エーイー)のエステバン・ルコックさん&中村葵さんへのインタビューをご紹介します。
左からエステバン・ルコックさん、中村葵さん © Alison Lewis
Interview
「0AR(ゼロ・エーアール)」はどのような経緯で制作された作品ですか?
2017年にダンスのVR作品を創った際、サドラーズ・ウェルズ劇場(イギリス)の芸術監督兼CEOのアリスター・スポルディング氏との出会いから「劇場20周年記念にVR作品を作ってくれませんか」と、依頼をいただいたのがきっかけです。
サドラーズ・ウェルズ劇場の公演時に、すべての年齢層を対象に、ホワイエで鑑賞できるフレキシブルな短編作品ということを踏まえながら、これまでに同劇場で上演された作品から題材を決めることにして、選んだのが『zero degrees(ゼロ・ディグリース)(2005年)』でした。
題材としたこの作品は、アクラム・カーン氏(振付家・ダンサー)とシディ・ラルビ・シェルカウイ氏(振付家・ダンサー・演出家)によるダンス作品です。カーン氏がバングラデシュ~インドへ旅した経験に基づいて、旅のなかで生命の核心にある「0」という源を求める物語で、いろいろなアイデンティティが混ざるカーン氏とシェルカウイ氏の二人から想起された、生・死、光・闇、混沌・秩序という両極を通じて中間点を探求しています。ダンサー、作曲家、ビジュアルアーティストなど、異なる分野がコラボレーションした傑作です。舞台と観客がつながるような空間を思い描きながら創作されている点は、私たちの作品づくりにも共通するところがありました。
この作品をもとに私たちは「0AR(ゼロ・エーアール)」を制作しました。創作において、私たちは「現実と非現実をどういう風に一緒にまとめていくか」という点を追求しています。
ご自身が制作されたプログラム「0AR(ゼロ・エーアール)」が愛知で上演されたことについて、どのように思われますか?
バレエ留学を機にヨーロッパで暮らすようになって21年が経ちましたが、「日本で作品を上演したい」とはいつも思っていることです。活動のなかで機会があれば日本に行きたいという気持ちにやっぱり繋がるので、今回は特別な思いがありました。愛知にはコロナ禍の2021年くらいに一度おうかがいしたことがあり、作品をお届けすることができてすごくうれしかったです。
エステバンはフランス国籍で、お父さんがポルトガル人、お母さんがフランス人。二人ともダンサー・振付家なので、ずっと一緒にアイデアとディレクションを交換しているような状態で制作しています。つまり作品は、私一人だけで作っているものではなくて、いろいろな国の文化が凝縮しているもの。日本のお客さまにどういう風に観ていただけているのか、日本の方にも認めていただけるのか、楽しんでいただけるのかというのは、いつも不安と楽しみが混じったような感じがあります。
今後の展望は何かございますか?
独自の振り付け型AIを開発し使った作品『リリス・エイオン』のツアーや、ロボットを使う新作制作を現在進めています。今後、私たちの技術がどのように発展していけるか楽しみです。そして、活動を通して、多くの方が芸術と技術の融合に触れて、知っていただけることが大切と考えています。イギリス・チャッタムにある私たちの拠点A+E Lab(エーイーラボ)では、新作の発表をはじめ、アーティストのサポート、作品やワークショップを通した人と人をつなげるなどの取り組みにより、地域を盛り上げていく活動にも力を入れていきます。
撮影・取材・文/Re!na 編集/村瀬実希(MAISONETTE Inc.)
インタビュー (聞き手・編集)/愛知県芸術劇場
※ 掲載内容は2025年2月3日(月)現在のものです。