2026/02/24
【特集】スタインウェイやベーゼンドルファー、ヤマハの違いは?コンサートホールを代表する世界のピアノ

愛知県芸術劇場コンサートホールでは、30年以上にわたり、国内外で活躍するアーティストから地元の演奏家まで、数えきれない名演が生まれてきました。コンサートホールの魅力は、クラシック音楽に最適な空間だけではありません。舞台上の楽器も大切な存在です。今回は、私たちにとって最も身近な楽器のひとつと言えるピアノに注目します。
愛知県芸術劇場では現在、21台のピアノ(2026年2月現在)を用意しています。スタインウェイ、ベーゼンドルファー、ヤマハなど、それぞれに音や響きの個性を持つピアノは、作品や演奏家に合わせて選ばれ、舞台ごとに違った“音の景色”を描き出しています。そしてこのたび、コンサートホールにヤマハの最高峰モデル「CFX」が新しく仲間入りします。フルコンサート・グランドピアノの導入は、なんと約18年ぶりとなります。「CFX」のコンサートデビューは、2026年3月7日(土)「ピアノ・ツィルクス~5台ピアノの世界 in 愛知県芸術劇場」です。スタインウェイ2台、ベーゼンドルファー1台、ヤマハ2台のピアノが舞台上に並ぶ、圧巻のコンサートをお見逃しなく!
今回は、愛知県芸術劇場の浅野芳夫支配人と一緒にピアノ庫(ピアノを保管している楽器庫)へ。コンサートホールを代表するピアノを巡りながら、「調律師さんのちょこっと解説」とともに、それぞれのピアノの個性をのぞいてみましょう。

愛知県芸術劇場 浅野芳夫支配人とスタインウェイ「D274」。
- 目次 -
ヤマハ「CFX」新導入へ
愛知県芸術劇場 浅野芳夫支配人の思い
支配人 愛知県芸術劇場のコンサートホールでは、日本はもとより、世界のアーティストにご利用いただいています。世界屈指のピアノメーカーの名器が揃うなか、今回そのラインナップにヤマハ「CFX」が加わりました。ヤマハのピアノを使用するアーティストやホール利用者の方からは、国際コンクールでも使用されることの多い、このピアノの導入の要望がこれまで寄せられてきました。お客さまに良質な音楽をより楽しんでいただけるように、県との調整や、ホールとしての受け入れの費用面などもろもろの調整がついたことから、今回の導入に至った次第です。

最高峰のピアノ「CFX」を導入することで、コンサートホールを彩る音色が新たに加わります。お客さまやアーティストの方々、ホール利用者の方に喜んでいただける、聴いて楽しんでいただけると信じていますので、素敵な音楽を聞きにぜひホールにお越しいただけますと幸いです。

ヤマハ「CFX」は、多くのトップピアニストと対話を重ね、長い年月をかけ、匠たちの技と叡智(えいち)により結実した、唯一無二のフラッグシップモデル。ピアニストの情熱を実際の音に変え、共に作り上げた音楽を、コンサートホールの広い空間いっぱいに満たします。
コンサートホールの舞台裏
\ピアノ庫にやってきました!/

ピアノ庫は、コンサートホールの舞台袖のすぐ近くと、別のフロアの2か所に分かれています。

ピアノの状態を安定させるために、ピアノ庫では24時間エアコンでの空調管理、除湿器や加湿器を使用しての湿度管理をしています。
スタインウェイ「D274」

調律師さんのちょこっと解説
スタインウェイは、コンクールやコンサートホール等でよく使用されるピアノで、いわゆる世界のスタンダードといえるでしょう。明るく輝くような音がよく響き、中低音は重厚。音色の幅が広く、その変化も豊かです。クラシックはもちろん、室内楽やジャズまで、ジャンルを選ばずさまざまに対応できることが大きな魅力です。実際、スタインウェイを選ぶ演奏家は多種多様で、多くの方々に信頼されているピアノだと感じています。私たち調律師の仕事は、素晴らしいパフォーマンスをされる演奏家の方が滞りなく公演を行えるよう、差し障りのないサポートでピアノを整備することです。
(有)コンサートピアノサービス 所属 光田さん
調律歴40年。愛知芸術文化センターの開館時から、愛知県芸術劇場のピアノ(スタインウェイ、ベーゼンドルファー)に携わる。

支配人 世界を代表するピアニストや、最高水準の音楽的表現を追求する方々から支持されているスタインウェイを、愛知県芸術劇場では、コンサートホールと大ホールで合わせて4台保有しています。
外装が黒色艶出し、ペダルや蝶番は真鍮製、内部の鋳鉄フレームはゴールド塗装で、とても美しいです。愛知県内の芸術大学の学生などにも使われていて、たくさんの演奏家に憧れのピアノを弾く喜びを感じてもらっています。劇場は夢を与える場所ですから。それがやがて幸せのブーメランのように、私たちのところに返ってくることもあるんです。
ベーゼンドルファー「290インペリアル」

調律師さんのちょこっと解説
ベーゼンドルファーは、音楽と芸術の都・ウィーンで生まれ、ウィーンの文化に根ざして育まれてきました。構造の詳しい説明は専門的になるためここでは触れませんが、ほかのメーカーとは製造理念も作り方も大きく異なります。愛知県芸術劇場にあるのは、ベーゼンドルファーのなかでも最も大きなモデル「290インペリアル」。一般的なピアノが88鍵であるのに対し、最低音域が拡張された97鍵を備えています。この拡張は、イタリアの作曲家ブゾーニが、バッハ作品を編曲するために要望したことがきっかけとも言われています。モーツァルトやシューベルト、近代ではバルトークなど、長い歴史のなかでウィーンにゆかりのある作曲家に愛され、リストの超絶技巧にも耐えた楽器という逸話も残ります。柔らかい木を多く用いることで、音の印象は柔らかく、よく伸び、内側から湧き出てくるような芳醇な響き。近くで聴いても心地良い音が広がります。
(有)コンサートピアノサービス 所属 光田さん

支配人 ベーゼンドルファーの象徴的なモデル「290インペリアル」は、9鍵拡張した黒い鍵盤が一番の特徴です。
公式サイトには、著名な方々がベーゼンドルファー・アーティストとして並びます。見た目も重視する私が好きなのは、このたたずまいですね。ピアノといえば、曲線的なデザインが多いなかで、ベーゼンドルファーは直線を活かしたシャープな造形がカッコ良いんです。ステージに出たときの映え方にもご注目ください。
ヤマハ「CFIIIS」

調律師さんのちょこっと解説
ヤマハは、多くの演奏家が一番弾き慣れているピアノではないでしょうか。小さい頃から触れてきた、慣れ親しんだ音。丈夫な造りにも定評があり、安定感があって、安心して向き合える印象があります。ヤマハらしい音が伝わる「CFIII」に比べると、「CFIIIS」は少し華やかで、キラキラとした響きが特徴です。そこに新たな「CFX」が加わることで、同じヤマハのなかでも、音の個性の違いをより感じていただけると思います。
(株)ヤマハミュージックジャパン 所属 堀川さん
調律歴20年。2019年から、愛知県芸術劇場のピアノ(ヤマハ)に携わる。

支配人 ヤマハ「CFIIIS」は、積み重ねてきたノウハウのすべてを注ぎ込み、ピアノづくり100余年の集大成として誕生しました。
日本の公共ホールで広く導入されていて、このピアノは愛知芸術文化センターが開館した1992年に購入したものです。白鍵には象牙、黒鍵には黒檀を使用し、鍵盤の表面をよく見ると、微細な縞目模様がわかります。象牙の鍵盤は吸湿性に優れているため、長時間の演奏で指が汗ばんでも滑りにくく、多くの音楽家に親しまれてきました。現在のCFシリーズでは、ヤマハ独自開発のアイボライトを採用し、天然象牙の性質に近づけた弾き心地を実現しています。
「ピアノ・ツィルクス~5台ピアノの世界 in 愛知県芸術劇場」の聴きどころは? 出演者からメッセージ

これまではコンサートホールのピアノを紹介してきました。ここからはこれらのピアノ計5台を使ったコンサートをご紹介します。新潟、三重で人気を博した重厚な音と美しく繊細な音色を奏でるコンサートが愛知県芸術劇場コンサートホールに登場します。舞台上にはスタインウェイ2台、ベーゼンドルファー1台、ヤマハ2台のピアノが並び、その姿はまさに圧巻! タイトルにある「ツィルクス」とはドイツ語でサーカスの意。白石光隆、田村緑、中川賢一、デュエットゥ かなえ&ゆかりの5人のピアニストによる50本の指が鍵盤上を激しく躍動し、披露される超絶技巧はまさにサーカスのようです。5台のピアノならではの多彩で個性豊かな響きがホール全体を包み込みます。
Message
白石光隆 みなさまがよくご存じのG.ガーシュウィン『ラプソディ・イン・ブルー』、G.ホルスト『木星』からはじまりまして、新しいレパートリーにもたくさんチャレンジしてお届けするコンサートです。See you soon, everybody! Have a wonderful time.
田村緑 みなさまを真正面に見て演奏できるという、とても稀な機会をいただきました。私が演奏するベーゼンドルファー「インペリアル」は、88鍵にプラスして9鍵の鍵盤があり、ピアノの面積も大きく、力強く温かい音色が特徴です。今回のプログラムは、イギリスの作曲家G.ホルスト『木星』からお届けします。私も10年間イギリスに滞在していましたので、とても思い入れのある曲です。リズミカルでメロディアスな5台ピアノの音色で、みなさまをお迎えします。ほかにも選りすぐりの曲をたくさんご用意しました。ピアノ・ツィルクスの迫力と、息の合った演奏をぜひお楽しみください。
中川賢一 5台のピアノ=5台のオーケストラ。素晴らしいオーケストラを奏でられる愛知県芸術劇場コンサートホールで行う今回の公演は、世界的に見てもなかなかないことです。このホールは、演奏する側にとってすごく気持ちよく弾きやすい空間で、聴く方にとっても最高だと思います。ピアノのソロ曲からオーケストラ作品、そして我々のために書かれた曲まで、さまざまなプログラムを用意しています。ぜひ楽しみにしていてください!

デュエットゥ かなえ&ゆかり 私たちが今回担当するピアノはヤマハです。スタインウェイ、ベーゼンドルファーに挟まれた"メイド・イン・ジャパン"で、とても楽しみにしています。本当に聴きどころのある曲がたくさんのプログラムなんですけれども、特に私たちのオススメはG.ガーシュウィン『ラプソディ・イン・ブルー』。この曲には、私たちユニットの連弾ならではの"ある秘密"が隠されていますので、当日聴いていただければと思います。愛知県芸術劇場コンサートホールでピアノ同士が“響鳴”を起こし、会場に来てくださったお客さまと共鳴を起こす。音の渦をぜひ楽しみに。みなさまのお越しをお待ちしています。

2026年3月7日(土)開催
ピアノ・ツィルクス~5台ピアノの世界 in 愛知県芸術劇場
場所/愛知県芸術劇場コンサートホール(愛知芸術文化センター4階)
時間/15:00〜
料金/一般 4,800円(U25 2,500円)
※U25は公演日に25歳以下対象(要証明書)。
※未就学児入場不可。託児サービスあり(有料・要予約)。
※「劇場と子ども7万人プロジェクト」(小・中・高校生招待)対象公演。
ピアノ/白石光隆、田村緑、中川賢一、デュエットゥ かなえ&ゆかり
プログラム/
G.ホルスト(駒井一輝 編):木星
C.ドビュッシー(加藤昌則 編):月の光(5台ピアノver.)
加藤昌則 編:ジョン・ウィリアムズ・メドレー
G.ガーシュウィン(駒井一輝 編):ラプソディ・イン・ブルー ほか
詳しくはこちら
詳しく知りたい!
ヤマハ最高峰のピアノ「CFX」が愛知県芸術劇場コンサートホールにやってくる
「ピアノ・ツィルクス~5台ピアノの世界 in 愛知県芸術劇場」に出演するピアニストの中川賢一さんが、愛知県芸術劇場コンサートホールに新たに導入されることになったヤマハ最高峰のピアノ「CFX」を複数台から選定する様子をレポートします。
撮影・編集/村瀬実希(MAISONETTE Inc.)
撮影/愛知県芸術劇場
※ 掲載内容は2026年2月24日(火)現在のものです。










