2025/08/28

身体にフォーカスし“共鳴”する!ヨガ講師が出会った海外ダンス公演 愛知県芸術劇場

世界で賞賛されるダンスカンパニーの舞台が、名古屋で観られることをご存じですか。愛知県芸術劇場の海外招聘シリーズでは、2023年にカナダのキッド・ピボット、24年にオランダのNDT 1と、第一線で活躍する振付家・ダンサーのコンテンポラリー・ダンスをお届けしてきました。「劇場にまだ行ったことがない」や「ダンスはちょっとハードルが高いかも…」という方も、この記事を読むと行ってみたくなるかも!?
今回は「コンテンポラリー・ダンス公演ははじめて」という栄で活動されているヨガ講師の方をモニターとして迎え、愛知県芸術劇場大ホールでの鑑賞を体験していただきました。世界中で愛好家の多いヨガとダンス。“身体”という共通テーマから、どんな時間が生まれたのでしょうか。


© ニシオヤスタカ

 

今回の体験者
中富紗穂さん
Saho Nakatomi
ヨガ講師。Hisaya-odori Park「PARK MORNING YOGA」・オンライン朝ヨガ「Early Bird Club」主宰。 言葉・アート・自然とともにある暮らしを大切にしながら、都市の中に静けさと呼吸を取り戻すヨガを届けている。Hisaya-odori Park デザインセンターのスタッフとして、公園と店舗が一体となった名古屋の新しい公園づくりにも従事。


Web https://rhp.nagoya/
Instagram @hand_eye_see

 

鑑賞公演:アクラム・カーン『ジャングル・ブック』

2025年6月28日(土)開催
アクラム・カーン『ジャングル・ブック』

イギリス発、自然と動物たちの賛歌、環境をテーマにしたダンス×アニメーション。ロンドン・オリンピック開会式の一部振付を担ったアクラム・カーンによる話題の舞台『ジャングル・ブック』の世界ツアーのファイナルを迎えるのが、ここ愛知です。アクラム・カーン・カンパニーは2027年3月で活動終了するという見逃せない機会に、国内各地からたくさんのファンが集まりました。

場所/愛知県芸術劇場 大ホール(愛知芸術文化センター2階)

詳細はこちら

 

扉を開けば、そこは非日常。開演前から始まる、劇場だけのときめき


高級感があり、広々としたホワイエ(ロビー)の空間。

 


コンテンポラリー・ダンス公演に以前から興味があったという中富さん。ウキウキとした様子で入場すると、ホワイエ(出入口から客席までの広間)に広がる空間が迎えてくれます。



 中富 現在は近くのHisaya-odori Parkに勤務し、学生時代はオアシス21の芝生広場で友人とよく過ごしていました。愛知芸文センターでは、愛知県美術館のミュージアムショップで買い物をすることもあります。ただ、劇場を訪れるきっかけはなかなかなくて。こうして、いつもとは少し違う気分で、おしゃれをして出かけられる場所っていいですね。

 

 

ホワイエとは、フランス語で「団らんの場、溜まり場(FOYER)」という意味。華やかな雰囲気に包まれ、期待感が高まるなか、開演までの時間を楽しみます。本公演を紹介する『AAC Journal』やパンフレットを読んだり……。


フォトスポットで記念撮影したり。ジャングルに暮らすキャラクターになりきってポーズ!

 

そして、大ホール内へ。座席を確認してから向かいます(大ホールの座席表はこちら)。

 


大ホールの総席数は2,480席。本格的なオペラやバレエが上演可能な日本初のオペラシアターとして、1992年にオープンしました。開館から30年以上にわたり数々のダンス等の公演を重ねてきた劇場ならではの、歴史ある趣と風格が感じられ、中富さんの目は輝き、笑顔がこぼれます。


本日鑑賞するのは1階席です。

 

\いよいよ上演!/

 

幕の向こうは別世界。舞台が誘う、新たな旅へ。

 

幕間の休憩には……

※ビュッフェ営業の有無は公演によります。

ビュッフェでは、開演前や休憩中にドリンクや軽い食事を楽しめます。観客の方々がくつろぐ和やかなムードのなか、中富さんもコーヒーとチョコレートケーキを味わいました。

 

 

 

終演後は客席から拍手喝采、カーテンコールの余韻に包まれて


カーテンコールでは場内がスタンディングオベーションとなり、大盛況のなかで幕が下りました。その場でしか味わえない感動が広がり、ホールを出た後のホワイエにも熱気があふれています。

 

 

 

劇場の顔として、観客のみなさまをお見送りする唐津絵理 愛知県芸術劇場 芸術監督(アーティスティックディレクター)・常務理事とご挨拶。

 

終演後のご感想は?

 

中富 鑑賞をしていて、ダンサーさんからも空間からも自分の内側からもエネルギーが感じられて、それは他の芸術に触れたときともちょっと違う熱量や生命力みたいなドクドクと湧き上がるようなものがありました。この正体は何だろう?と思っていたのですが、私の身体があの空間と共鳴していたんだな!と気づき、「共鳴」こそが私の感じた生のコンテンポラリー・ダンスの魅力だと思いました。
ダンサーさんたちの生み出すリズムや動きや息遣いにぐっと引き込まれて、すっと動きが止まった瞬間、私の呼吸もすっと止まっていたり。肩甲骨を広げ、肩をすくめながら警戒するしぐさのときには私の肩も気づけば一緒に動いていたり、観ているんだけど、感じているという感覚がありました。言葉ではなく、身体を通して何かと共鳴するという点では、ヨガも身体を通じて自分の内側と共鳴していくことから始まるので、似ているという新しい発見もありました。もっと自分の身体をくまなく使って楽しみたいという気持ちもさらに湧いてきたので、ヨガやダンスでその気持ちを昇華させていこうと思います!

 

ヨガ講師・中富さんが唐津芸術監督に聞く「海外ダンス公演の魅力」

 

After Talk

 

はじめてのコンテンポラリー・ダンス公演、愛知県芸術劇場で体験したこと

中富 生で鑑賞するコンテンポラリー・ダンスは、ダンサーさんの動きと自分の体が共鳴し、作品の輪の中に一歩入り込むような感覚がありました。体を通じて自分の内面や自然とつながるヨガと同じように、コンテンポラリー・ダンスも体を媒介に他者や世界とつながれるのだと感じました。

 

唐津 コンテンポラリー・ダンスは観客に見せるための作品なので、ダンサーたちは「何を観てもらうか」や他者の視線を意識しています。一方で、クリエイションの過程では、体の声を聞き、思い通りに動かし、伝えたいことをきちんと表現できる体を目指しています。さらに重視されているのは、その体で世界を感じ取ること。「コンテンポラリー」は“同時代”という意味です。身体表現に携わるアーティストは、今この地球に立ち、自然や社会の変化や危機感を体で直接感じ取り、それを表現せずにはいられないことがあります。頭で理解してから動くのではなく、体で受け取ったメッセージを作品へと昇華し、観客に届けているのです。

 

中富 劇場という非日常的な場所での体験も、予告編などの映像では味わえない魅力だと思います。一つの空間のなかで、生命体のようなエネルギーを感じました。次は1列目で拝見してみたいです。

 

唐津 2回公演がある場合は、最前列と全体を俯瞰できる後方席、両方で観るのがオススメです。隣に知らないお客さまがいても、その場にいる人だけが同じ瞬間を共有できます。舞台と客席の共鳴はもちろん、お客さま同士もその日その時だけの特別な時間を分かち合える。同じ公演でも、日によって全く異なる体験になります。オンラインでつながれる今でも、劇場には「その場でしか生まれない感覚」があります。『ジャングル・ブック』の振付家アクラム・カーンさんも、ライブ公演の意義を「人類に残された最後の儀式」と語っていました。日常を離れ、携帯も忘れ、自分の体と舞台上の体だけで交歓する――かけがえのない時間です。

 

中富 今はそれがとても貴重で、その時間ならではの特別感に魅力を感じる若い人も多いのではないかと思いました。私を含め、体を動かすことが好きな人には、ぜひ劇場で新しい発見をしてほしいですし、友人も誘って、また何かを観に来たいです。

 

ネザーランド‧ダンス‧シアター (NDT 2)来日公演の見どころ

唐津 ダンスは言葉を必要としないことが多いですよね。今回の舞台でも言葉を用いていましたが、ダンサーが勝負するのはやはり体です。言語を越えてコミュニケーションができるので、とてもインターナショナルな表現だと思います。振付家それぞれの特徴も大きく影響します。たとえばアクラム・カーンさんはイギリスとバングラデシュにルーツを持ち、インド舞踊のメソッドも作品に取り入れていました。
次に来日するオランダのカンパニーNDT 2は、世界中からオーディションで選ばれた精鋭ダンサーが集まり、多国籍で多様なタイプのアーティストが所属しています。言語にとらわれない身体表現のなかに、振付家のオリジナリティやダンサーの高い技術が融合する――それこそが海外カンパニーの豊かさだと思います。

中富 人間は体ひとつで、これほどまでに人の心を動かす物語を語れるのだと感動しました。言葉がなくても楽しめる舞台は、本当にグローバルですね。

 

唐津 コンテンポラリー・ダンスでは、実は物語がある方が珍しいんです。今度のNDT 2の公演には、いわゆるわかりやすい物語は全くありません。個性派揃いの振付家による3作品は、むしろ抽象的な、体から生み出される動きの面白さに魅力を感じてもらえるものが多いと思います。

 

中富 NDT 2の公演も楽しみにしています。今回はじめてダンス公演を鑑賞し、唐津監督とお話しできたことで、劇場を身近に感じるきっかけになりました。ありがとうございました。

 

中富さん、ありがとうございました。愛知県芸術劇場では、ダンス、音楽、演劇など、さまざまなジャンルの公演が開催されます。またお気軽にお越しください。

 

次回の海外招聘公演は、国際的なダンスカンパニーのNDT 2が約20年ぶりに来日!

 

 

 

2025年11月24日(月・休)開催
ネザーランド‧ダンス‧シアター (NDT 2)
来日公演2025


革新的なダンス表現で世界を牽引するオランダのコンテンポラリー・バレエダンスカンパニー「NDT(ネザーランド・ダンス・シアター)」が、今年も日本へ! 2024年のNDT 1招聘に続き、新進気鋭の若きダンサーで構成されたNDT 2が登場。最新作を含むエネルギッシュかつ緻密な3作品で構成されます。 日本での本格的な紹介となるマルコス・モラウは、視覚を圧倒しエネルギーあふれる身体へのアプローチを提示。ボティス・セヴァは、ヒップホップのダイナミズムを大胆にシアターピースへと昇華させ、ダンスの可能性を拡張します。 そして日本でも高い人気を誇るアレクサンダー・エクマンは、ユニークかつ洗練された構成で観客を作品に巻き込みます。 五感を揺さぶる刺激的なダンスから生まれるインスピレーションを、劇場で体験してください。


場所/愛知県芸術劇場 大ホール(愛知芸術文化センター2階)
時間/16:00〜

詳細はこちら

 

 

撮影・取材・文/村瀬実希(MAISONETTE Inc.)

※ 掲載内容は2025年8月28日(木)現在のものです。

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