2025/11/05
愛知県美術館 ミュージアムショップのアート文具を来館記念や名古屋のお土産に【ちょこっと作品解説付き】
愛知県美術館の10階ロビーにあるミュージアムショップには、グスタフ・クリムトをはじめ、愛知県美術館の所蔵作品をモチーフとした豊富なオリジナルグッズが揃っています。現在は国際芸術祭「あいち2025」オフィシャルショップとなり、公式グッズと合わせてこれらも販売中です。
今回はバラエティに富んだアイテムのなかから、日常を豊かにする身近なステーショナリーをセレクト。作家や作品について興味が湧いてくる「学芸員のちょこっと解説」をお届けします。ミュージアムショップのスタッフが厳選したアイテムは、「他ではなかなか手に入らないものも見つかる」「ユニークな名古屋のお土産選びの穴場」と好評。お手頃価格なので、プレゼントにもぴったりです。

愛知県美術館の所蔵作品をモチーフとしたステーショナリーに注目
- 目次 -
クリムト《人生は戦いなり(黄金の騎士)》シリーズ

愛知県美術館のコレクションを代表する作品の一つ、グスタフ・クリムト《人生は戦いなり(黄金の騎士)》関連のグッズは通年人気です。読書の時間を輝くひとときにしてくれるゴールドの栞(750円)やクリアファイル(550円)など、思わず自慢したくなる愛知県美術館ならではのアイテムが充実しています。

グスタフ・クリムト 《人生は戦いなり(黄金の騎士)》1903年
学芸員のちょこっと解説
黄金色の甲冑(かっちゅう)に身を固め、右手で槍(やり)を持ち、黒鹿毛の馬にまたがる騎士。騎士も馬も平面的に描かれ、兜(かぶと)や槍の柄、手綱(たづな)などには工芸的な装飾が用いられています。19世紀末のウィーンで、写実的な作風からの大きな変化を試みて非難を浴びたグスタフ・クリムトは、我が道を貫く自分の決意をこの騎士の姿に重ねて表現しました。騎士は前方の蛇や足元の幹に潜むどくろ顔の魔物には目もくれず、背景の森に金をまき地面に色とりどりの花を咲かせながら、悠然と進んでいきます。
A4クリアファイル マティス《待つ》、クリムト《人生は戦いなり(黄金の騎士)》、鷲尾友公×AACオリジナルグッズ

何枚あってもうれしいクリアファイル。写真左より、アンリ・マティス《待つ》(385円)はフランス・ニースのアパルトマンの一室で描かれた作品をデザインし、表面も裏面も素敵。グスタフ・クリムト《人生は戦いなり(黄金の騎士)》(550円)、愛知県出身アーティストの鷲尾友公×AAC(440円)の絵柄から、好みや気分に合わせて選んでください。
アンリ・マティス《待つ》1921-22年
学芸員のちょこっと解説
アンリ・マティスは1904年から07年にかけて、強烈な色彩と大胆なタッチを特徴とする「フォーヴィスム」の中心でした。その後画面の平坦化と装飾化に取り組み、1910年代後半には柔らかな色彩と穏やかな陰影をもつ作風へ進みました。この絵は1921年から南フランスのニースに借りた部屋で描いたもので、窓外には明るい緑青の地中海とヤシのある海岸が見えます。人か手紙を待つ女性たちの一人は外の遠くを見つめ、もう一人は心細げにうつむいていますが、壁やスカートの模様は華やかです。
ブックカバー、ペンケース 芦雪《薔薇蝶狗子図》

長沢芦雪《薔薇蝶狗子図》(ばらちょうくしず)に出てくるふわふわの犬たちの愛らしいデザインに、犬好きな人は一目惚れすること間違いなし。文庫サイズのブックカバー(1,210円)は、深みのある緑色が心落ち着く読書の時間に寄り添います。ペンケース(1,100円)はベージュとグレーの2色展開で、メガネケースとしても使えるサイズ感です。

長沢芦雪《薔薇蝶狗子図》18世紀後半
学芸員のちょこっと解説
伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)・曽我蕭白(そがしょうはく)と並び「奇想の画家」とされる長沢芦雪(ながさわろせつ)は、師の円山応挙(まるやまおうきょ)が得意とした子犬の絵をさらに人間っぽく描きました。本図では5匹の子犬のうち2匹が赤いバラの花を見上げていて、バラの美しさがわかるのかと思いきや、花にとまる蝶がいます。彼らの手前には右外の何かに気を取られている白犬がいて、興奮して動くしっぽを隣の茶白犬が叩いていますが、そのしっぽもくるりと巻いています。左下で後ろ姿の黒犬は芦雪の子犬図の常連で、芦雪の分身ではと考えられています。
ポストカード 芦雪《薔薇蝶狗子図》、ポインター《世界の若かりし頃》、ムンク《イプセン『幽霊』からの一場面》など

多彩なオリジナルポストカード(1枚120円)は、メッセージを添えて大切な相手に送っても、額縁に入れて飾ってもオススメです。長沢芦雪《薔薇蝶狗子図》、エドワード・ジョン・ポインター《世界の若かりし頃》、エドヴァルド・ムンク《イプセン『幽霊』からの一場面》など、コレクション展で注目を集める作品のポストカードが多数。気になったものをぜひ手に取ってご覧ください。


エドワード・ジョン・ポインター《世界の若かりし頃》1891年
学芸員のちょこっと解説
19世紀のヨーロッパで、保守的なアカデミーの画家たちは古代ギリシャを美の規範としました。その一人イギリスのエドワード・ジョン・ポインターは聖書や神話を題材に人気を博しましたが、この絵は古代ローマ風の室内で、二人の女性がお手玉に似たゲームをする姿は、ギリシャで発掘された素焼きの小像や壺絵に基づいています。窓辺で眠る女性は夏のけだるさの象徴といわれます。透ける衣装や滑らかな肌、石の模様などの描写には高い技量が示されています。

エドヴァルド・ムンク《イプセン『幽霊』からの一場面》1906年
学芸員のちょこっと解説
《叫び》で知られるエドヴァルド・ムンクがベルリンの劇場から依頼され、彼と同じノルウェーの劇作家ヘンリック・イプセンの『幽霊』上演の舞台イメージとして描いた連作の一点です。10年前に他界した地方名士の秘密が露わとなり家族が一夜にして破滅に向かう筋書きで、陰鬱なフィヨルドに面したガラス窓や、無情に時を刻む大時計のある部屋の中、無言の人々が別々の方角を向いて思いに沈んでいます。暗色の衣装、テーブルのランプに照らされた黄緑色の顔が不安を高め、制作最後に加えられた赤色が血の因縁を暗示しています。
紙ペン レジェ《緑の背景のコンポジション(葉のあるコンポジション)》、瑛九《白い輪》

今日から始める、エコ活動の第一歩。再生紙の紙管でできたキャップ式の紙ペン(1本280円、2本セット500円)は、使用後は分解して分別処理もOKという地球に優しいところが魅力です。しっくりと手に馴染み、ペンの色はどちらも黒。フェルナン・レジェ《緑の背景のコンポジション(葉のあるコンポジション)》や瑛九(えいきゅう)《白い輪》のデザインに、創作意欲を掻き立てられます。

フェルナン・レジェ《緑の背景のコンポジション(葉のあるコンポジション)》1931年
学芸員のちょこっと解説
1910年頃からキュビスムに参加したフェルナン・レジェは間もなく、物や人などの形を円筒に単純化するとともに、鮮やかな色を用いる独自の表現に至りました。1917年からは機械文明や都市を主題としていきます。1931年の本作では、機械部品のように人工的な形と、植物や微生物を思わせる有機的な形が並置されています。同時代のシュルレアリスムの作家たちが無関係なもの同士を出合わせたコラージュとの関連を思わせますが、レジェは奥行きのない平面上で陰影のあるものと無いものが混在する不思議な画面を生み出しています。

瑛九《白い輪》1954年
学芸員のちょこっと解説
瑛九(えいきゅう)は印画紙に電灯光を当てて描く方法を「フォト・デッサン」と名付け、25歳の1936年に作品集を刊行。その後、水墨画や印象派風・点描など変遷を経て、1940年代後半から抽象絵画を追究しました。この作品には、切り抜いた型紙を印画紙の上で動かしながら複数回露光するタイプのフォト・デッサンに通じる感覚があります。画面上半で正方形の中にある輪ゴムのような形が回転するうちに外側の大きな真円になり、右の青い背景へと傾いて行きます。下半部では白・赤・青の断片が振り子状に左右に揺れながら降りていくかのようです。
養生テープ レジェ《サーカス》

フェルナン・レジェ《サーカス》シリーズより、全11点の絵柄が養生テープ(660円)に。使うたびにユーモアあふれる作品がかわるがわる現れてワクワクが止まりません。ギフトの梱包資材としてはもちろん、日常で使うさまざまなものを楽しくおしゃれに演出してくれます。


フェルナン・レジェ《サーカス》1950年
学芸員のちょこっと解説
サーカスは、近代の人気のある娯楽として、パブロ・ピカソをはじめ20世紀前半の多くの画家たちに描かれてきました。フェルナン・レジェもまたサーカスをテーマに選び、自ら執筆したテキストとともに83点のリトグラフを収めた挿絵本を作りました。にぎやかで楽しげなイメージがたくさん描かれていますが、フェルナン・レジェの関心は、形の重なり合いに向けられているようです。それぞれ薄い1枚のリトグラフには、複雑に層が重なった世界が広がっています。
今回ご紹介した商品の他、美術館で開催中の展覧会の図録やオリジナルアイテム、テーマに合わせてセレクトするグッズも見逃せません。ミュージアムショップは、国際芸術祭「あいち2025」の会期中(2025年11月30日(日)まで)は営業し、12月はお休み。2026年1月3日(土)~3月23日(月)「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」の会期に再度オープンします。鑑賞後のお買い物も楽しみにおでかけください。
愛知県美術館 ミュージアムショップ
場所/愛知芸術文化センター10階 美術館ロビー内
営業時間/10:00〜18:00※金曜〜20:00
休館日/毎週月曜日
※営業時間・休館日は愛知県美術館に準じます。
※商品などのお問い合わせは愛知県文化振興事業団へ。
撮影/千葉亜津子
取材・文/Re!na 編集/村瀬実希(MAISONETTE Inc.)
※ 掲載内容は2025年11月5日(水)現在のものです。









